臨床実習開始前の「共用試験」第11版(平成25年)
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13-13-Ⅱ-1CBTの概要③問題セットの難易度の公平性:採点対象問題は難易度と識別力の問題の特性が明らかになっているので,ランダムに出題しても問題セット間に難易度の差がないように調整することが可能です。実際に,出題した問題セット間の素点での成績の平均難易度の標準偏差が0.6~0.7%程度と難易度の差が無視できるほど小さく設定されています。(4)CBT実施上の留意事項①各大学においては,一斉に試験を開始します。各ブロックの制限時間(1時間)終了後にコンピュータ画面での作業(visualdisplayterminalVDT)による眼の疲れを防ぐため一定の休憩時間を置いて次のブロックが開始されます。なお,各ブロックの試験開始後の会場からの入退出の制限時間は各大学の運用に任されています。②試験当日,各大学のCBT実施会場には機構からモニター委員が派遣され,CBTが厳正かつ公正に実施されているかどうかを確認します。③試験終了後,各大学から試験実施キット等が機構に全て返却された後,10日以内に各大学に学生個人の成績と各大学の成績が発送されます。(5)項目反応理論(ItemResponseTheory,IRT)の応用(医学系)①項目反応理論:「項目」とは個々の試験問題を表しているものであり,「反応」はその問題に正答するか誤答するかの状況を表現するものです。すなわち,事前に個々の試験問題の特性(難易度,識別力)の判明している個々の試験問題に対する反応(解答状況)を用いて,当該試験の結果から測定できる能力を推測するものです。統一試験の問題作成・実施・評価・運用のための優れた実践モデルとして世界的に定着しています。②共用試験の特殊性:「同一問題を用いた同一時期の一斉試験の方が公平である」との考えがありますが,各大学のカリキュラム(臨床実習開始時期)が異なることから,共用試験の全国一斉実施は困難です。そのため,異なった時期に試験を実施しても公平な評価が得られる試験方式が求められ,項目反応理論を用いた試験方式が適切な方法として採用されました。③項目特性曲線:p14の図に示してある項目(個々の問題)の特性を曲線で表すものです。横軸は,受験者の能力(実施された試験で測定できるもの)を示す物差しとなります(多くの本では能力値(θ)のような表記で示されています)。素点の総得点に相当するものです。縦軸は各能力レベルの人の当該問題に正答する確率となります。この曲線の位置により,問題の難易度を,曲線の勾配により,どの能力の人で識別できるかなどの特性が分かります。④項目反応理論による成績評価:個々の問題特性の値(項目困難度,項目識別力)に,問題の正答,誤答の結果をあてはめ,これを全ての出題された問題で行い,最も可能性の高い確率を示す能力を推測します。⑤基準集団:能力値という物差しを意味のある数値とするために,基準となる集団を決めて(現在は第1回(2006年度共用試験)正式実施結果),その集団のデータが標準正規分布(平均値:0,標準偏差:1)するように計算を行っています。この基準を固定することにより,現在のデータとの相対的位置が分かり,経年変化を見ることが可能となります。Ⅱ−1 CBTの概要

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