臨床実習開始前の「共用試験」第12版(平成26年)
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-13-Ⅱ-1CBTの概要③問題セットの難易度の公平性:試験出題前に問題セットの難易度の差ができるだけ小さくなるように調整しています。全大学の試験終了後,テスト得点(素点・100点換算)を用いてセット間の難易度の差を検証しています(難易度指標)。難易度指標は,全ての問題別正答率を用いて各受験生に出題した問題セットの平均値を求め,その分布を計算しています。難しい問題セットを受験した場合は,この難易度指標の値が小さくなります。2014年度の難易度指標の標準偏差は0.5点であり,約7割の受験生が1点差以内のテスト得点差の試験を受験していることになります。(4)CBT実施上の留意事項①各大学においては,一斉に試験を開始します。各ブロックの制限時間(1時間)終了後にコンピュータ画面での作業(visualdisplayterminalVDT)による眼の疲れを防ぐため一定の休憩時間を置いて次のブロックが開始されます。なお,各ブロックの試験開始後の会場からの入退出の制限時間は,各大学の運用に任されています。②試験当日,各大学のCBT実施会場には機構からモニター委員が派遣され,CBTが厳正かつ公正に実施されているかどうかを確認します。③試験終了後,各大学から試験実施キット等が機構に全て返却された後,10日以内に各大学に学生個人の成績と各大学の成績が発送されます。(5)項目反応理論(ItemResponseTheory,IRT)の応用①項目反応理論(ItemResponseTheory,IRT):「項目」とは,個々の試験問題を表しているものであり,「反応」はその問題に正答するか誤答するかの状況を表現するものです。すなわち,事前に個々の試験問題の特性(難易度,識別力)の判明している個々の試験問題に対する反応(解答状況)を用いて,当該試験の結果から測定できる能力を推測するものです。統一試験の問題作成・実施・評価・運用のための優れた実践モデルとして世界的に定着しています。②共用試験の特殊性:「同一問題を用いた同一時期の一斉試験の方が公平である」との考えがありますが,各大学のカリキュラム(臨床実習開始時期)が異なることから,共用試験の全国一斉実施は困難です。そのため,異なった時期に試験を実施しても公平な評価が得られる試験方式が求められ,項目反応理論を用いた試験方式が適切な方法として採用しました。③項目特性曲線:p14の図に示してある項目(個々の問題)の特性を曲線で表すものです。横軸は,受験者の能力(実施された試験で測定できるもの)を示す物差しとなります(多くの本では能力値(θ)のような表記で示されています)。素点の総得点に相当するものです。縦軸は,各能力レベルの人の当該問題に正答する確率となります。この曲線の位置により,問題の難易度を曲線の勾配により,どの能力の人で識別できるか等の特性が分かります。④項目反応理論による成績評価:この個々の問題特性の値(項目困難度,項目識別力)に,問題の正答,誤答の結果をあてはめ,これを全ての出題された問題で行い,最も可能性の高い確率を示す能力を推測します。

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