臨床実習開始前の「共用試験」第13版(平成27年)
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-13-Ⅱ-1CBTの概要③問題セットの難易度の公平性:試験出題前に問題セットの難易度の差ができるだけ小さくなるように調整しています。全大学の試験終了後,テスト得点(素点・100点換算)を用いてセット間の難易度の差を検証しています(難易度指標)。難易度指標は,全ての問題別正答率を用いて各受験生に出題した問題セットの平均値を求め,その分布を計算しています。難しい問題セットを受験した場合は,この難易度指標の値が小さくなります。2015年度の難易度指標の標準偏差は約0.5点であり,約7割の受験生が1点差以内のテスト得点差の試験を受験していることになります。(4)CBT実施上の留意事項①各大学においては,一斉に試験を開始します。各ブロックの制限時間(1時間)終了後,コンピュータ画面での作業(visualdisplayterminalVDT)による眼の疲れを防ぐため一定の休憩時間を経て,次のブロックが開始されます。なお,各ブロックの試験開始後の会場からの入退出の制限時間は,各大学の運用に任されています。②試験当日,各大学のCBT実施会場には機構からモニター委員が派遣され,CBTが厳正かつ公正に実施されているかどうかを確認します。③試験終了後,各大学から試験実施キット等が機構に全て返却された後,10日以内に各大学に学生個人の成績と各大学の成績が発送されます。(5)項目反応理論(ItemResponseTheory,IRT)の応用(医学系)①項目反応理論について:「項目(Item)」とは,試験を構成する1つ1つの問題のことであり(以下,個々の試験問題を項目と表記する),「反応(Response)」は,その項目に正答するか誤答するかの状況を表現するものです。項目反応理論とは,項目の特性(難易度,識別力)が判明している場合,その項目に対する反応(解答状況)を用いて,当該試験の結果から測定できる能力を推測するものです。大規模試験の項目作成・実施・評価・運用のための優れた実践モデルとして世界的に定着しています。②共用試験の特殊性:「同一問題を用い,同一時期の一斉試験の方が公平である」との考えがありますが,各大学のカリキュラム(臨床実習開始時期)が異なることから,共用試験の全国一斉実施は困難です。そのため,異なった時期に試験を実施しても公平な評価が得られる試験方式が求められ,項目反応理論を用いた試験方式が適切な方法として採用されました。③項目反応理論による成績評価:基本となるのは能力値です。能力値は,項目反応理論で測定しようとする能力を表す尺度であり,θと表記します。受験生個人の推測される能力を表すもので,全受験生では平均値0,標準偏差1の標準正規分布を仮定します。また,項目の特性を示す曲線の横軸として,能力の尺度を表しています。この能力値という物差しを意味のある数値とするために,基準となる集団を決めて[医学系(2006年度共用試験)正式実施結果,歯学系(2013年度共用試験)正式実施結果],その集団のデータが標準正規分布(平均値0,標準偏差1)するように計算を行っています。この基準を固定することにより,現在のデータとの相対的位置が分かり,経年変化を見ることが可能となります。基準集団の見直しは,定期的に行う必要があります。医学系は,基準集団の見直しを行い,第11回(2016年度)共用試験から(2012~2014年度共用試験)正式実施結果を用います。

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