共用試験ガイドブック第18版
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149はじめに 『臨床研修開始時に必要とされる技能と態度に関する学修・評価項目(第1.1版)』を公表します。これは診療参加型臨床実習を通して医学部を卒業する時までに医学生が身につけるべき臨床能力のうち、技能・態度についての到達目標(学修成果)を示したものです。 診療参加型臨床実習では、医学生は実際の臨床現場で診療チームの一員となって患者に接します。そのためには、医学生は必要な医学知識と臨床技能を身につけているとともに、患者と接し、医療専門職と協働するにふさわしい態度も求められます。 臨床研修開始前の技能・態度についての到達目標が『診療参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能と態度に関する学修・評価項目』であり、技能態度を含めた臨床能力を評価するのが共用試験 OSCE(Objective Structured Clinical Examination: 客観的臨床能力試験)です。 では、臨床実習終了時には、どのような臨床能力を身につけていることが求められるのでしょうか。それは、卒後臨床研修を円滑に開始するために必要な臨床能力です。臨床研修に求められるのは、診療参加型臨床実習前に問われるような個々の手技ではなく、それらを統合した臨床能力です。医療面接、身体診察を中心にした初期情報から疾患・病態を推論したり、すでに病態が明らかになっている患者では、その先の検査や治療計画等について診療チームの一員として検討に参加したりします。患者の診療においては、研修医自らが問題を同定し、その解決のための情報を検索できる能力が求められます。 診療参加型臨床実習において、医学生はまず臨床情報を確実にチームに伝える技能(症例提示能力)が求められます。様々な疾患・病態に遭遇し、その予防・診断・治療・リハビリテーションに関わっていく経験の積み重ねを通して、統合的な臨床能力を少しずつ身につけていくことが期待されます。この統合的な臨床能力を駆使して実践される具体的な業務・活動を『診療参加型臨床実習で学生が行う行為』として示しました。 医学部を卒業したばかりの医師に求められる知識の評価としては医師国家試験が定着していますが、技能や態度の評価は、『臨床実習終了時に求められる臨床能力の到達目標(学修成果)』の評価で行うことになります。評価の大きな部分は、診療参加型臨床実習を通じて協働する医療従事者や患者・家族から多面的になされるべきであり(360 度評価)、特に態度の評価は、観察記録による評価が有効です。一方、技能の評価は診療参加型臨床実習後 OSCE(Post Clinical Clerkship OSCE,Post-CC OSCE)が有用な評価法です。 卒業要件の一部としてのPost-CC OSCEは、2020 年度から正式に「共用試験」として開始します。医療系大学間共用試験実施評価機構から出題される課題では、基本的な臨床能力(医療面接、身体診察、臨床推論、症例提示)を評価します。 最後に強調しておきたいことは、真に使える技能や態度は臨床実習で養われるものであり、単にPost-CC OSCE対策をすることは百害あって一利なしです。実践可能な臨床能力は、経験しないと身につきません。すべての医学生が積極的に診療参加型臨床実習に取り組まれることを期待しています。 令和2年3月10日 公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構 医学系実施管理小委員会 委員長 望月 篤 教員・学生配付資料公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構 20201 / 74149149

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