共用試験ガイドブック第18版
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19Ⅰ-3臨床実習後共用試験の概要医学系,歯学系ともに,臨床実習後共用試験の詳細は後述するので,ここでは概要のみを示します。医学系,歯学系に共通するこの試験の目的は,学生は自分が卒業レベルの臨床能力を修得しているかを知ることであり,医師及び歯科医師育成機関である大学としては,自大学の学生に卒業を許容できる臨床能力を修得させることができたかを評価することであり,臨床研修指導医としては,卒業後に臨床研修を開始できるだけの能力を有する医師や歯科医師が育成されているかを評価することであり,社会・国民の視点からは,安全・安心な医療を提供できる医師及び歯科医師となっているかを評価することです。本来,これらの評価は,臨床実習の現場におけるworkplace-basedassessmentで実施することが望まれますが,全国の医学生や歯学生の臨床能力を同じ基準で評価するためにOSCEを主体とした方法が選択されています。医学系におけるOSCEは,ある症候を有する模擬患者に医療面接と身体診察とを行い,そこで得られた情報から,病態を解析して,鑑別診断や検査計画や治療計画を立案して指導医に報告するという,いわば日常の診療業務の一端をシミュレートした課題を3課題行います。もちろん,3課題では不十分ですから,各大学で考えた大学独自課題も3課題程度併用することが推奨されています。このOSCEのもう一つの特徴は,評価者です。大学で実施する試験の評価者として,自大学に所属する医師の教員のみが評価したのでは公平性に欠けますから,他大学の教員が実施大学に赴いて,そこの大学の学生の臨床能力を評価しますし,さらに,臨床研修病院の指導医も実施大学に赴いて学生の評価を行います。これは,実施大学にとっては,自大学の教育をも評価されることになりますから,臨床実習のさらなる改善が期待できるでしょう。歯学系における評価方法は,2つの部分からなっています。一つは臨床実習の現場でのworkplace-basedassessmentで,その能力の評価は評価者により「十分」,「許容範囲」,「不十分」の3段階評価がなされますが,「不十分」の評価であった学生については形成的評価として,臨床実習期間内に改善することが可能です。もう一つの評価は,全国共通の,模型を使用した一斉技能試験です。これは,とくに歯学系においては学生に優れた技能を習得させることはきわめて重要な課題で,かつそれが全国の歯学部卒業生が,みな一定レベル以上にあることを,この一斉技能試験によって国民・社会に具体的に示すことができます。歯学系におけるこれら二つの評価方法は,全国の歯学部の卒前教育にフィードバックされ,臨床実習の充実に資するはずです。

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